「ボク、しばらく見てて気づいたのよ」

 トエが言うのでミヤは何だい、と聞く。

 「ミヤはいつも笑ってるのよ!ミヤの顔が笑ってないところを、ボクは見たことがないのよ!」
 「あれ、そうだった?」

 言われたまま、それこそニヤニヤと笑う。トエは少し首を傾げる。

 「ミヤは、どうしていつも笑ってるのかしら?」
 「どうして、か」

 ミヤは別段考え込みもせずに返す。

 「それはもちろん、楽しいからさ。何をしてたって、レンちゃんやトエを見てると面白くてしょうがない。それで、楽しくて笑いたくなっちゃうのさ」
 「お、面白…」

 何だか納得のいかないことを言われたが、とりあえず流す。

 「それだけなのかしら?」
 「それだけだよ。自然と笑いたくなるんだからしょうがない――トエだって、今日はどんな顔をしよう、とか考えて決めたりはしないだろ」
 「それもそうなのよ…あ、でも」

 うーむ、と唸ってから、トエは顔を上げた。

 「ボクは、できれば楽しい顔をしていたいのよ!」

 言ったとおりに楽しそうに笑う。ミヤはへぇ、と微笑んだ。

 「いいねぇ。トエはそれが合ってると思うよ」
 「でも、ここのところびっくり顔ばっかりなのよ。記憶がないのも思ったより大変なのよ!」

 言いかけたところで、もう一人のことを思い出す。

 「それで、レンは逆なのよ!レンが笑ってるのは見たことがないのよ!」
 「あぁ、レンちゃんは」

 相棒の話題が出て、ミヤはニヤ、と笑った。

 「ああいう性格だからね」




 「ボク、しばらく見てて気づいたのよ」

 トエが言うのでレンは何、と聞く。

 「レンは全然笑わないのよ!レンの顔が笑ってるところを、ボクは見たことがないのよ!」
 「そうだっけ」

 言われたまま、特に笑顔は見せずに言う。トエは少し首を傾げる。

 「どうしてかしら?レンは、どんな時に笑うのかしら?」
 「どうして…、ね」

 レンは少し考えながら返す。

 「こういう顔してるのが自然だから、かな。笑いたくなれば、あたしだって笑うわよ――トエだって、笑おうと思って笑うわけじゃないでしょ」
 「それもそうなのよ…あ、でも」

 うーむ、と唸ってから、トエは顔を上げた。

 「笑顔抜きでも、レンは表情がたくさんあるのよ!楽しそうな時とか、秘策を練ってる時とか、嬉しそうな時とか!」

 言ったとおりに嬉しそうに笑う。レンは怪訝な顔をした。

 「そんな…?トエはあたしをどう見てるのよ」
 「レンにはそれが合ってると思うのよ!」

 言いかけたところで、もう一人のことを思い出す。

 「それで、ミヤは逆なのよ!ミヤが笑ってないのは見たことがないのよ!」
 「あぁ、ミヤは」

 相棒の話題が出て、レンは少し眉を寄せた。

 「ああいう性格だから」





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